千年女優

映画評を読んでなるほどなーと思ったことが。
原文ママではなく、要約です。

ヒロインの性格、心情などが描かれていない。何故「鍵の君」を追いかけ続けなければならなかったのか。「鍵の君」のどこにどうして惚れたのかが描かれていないので、最後の台詞がキャラクターの描写ではなく「人生を総括して肯定する」ためだけにある。

確かに、藤原千代子がどんな葛藤を抱えていたのかは実際にはほとんど描かれず、現実と映画の境目を行ったり来たりしていることばかりが映画として描かれていましたし、作内で「こんなに好きになっていくのに顔も思い出せない」と告白しているくらい「鍵の君」についての情報は薄いです。
私がこの映画を見ている時にはまったく気にしていませんでした。
私の中では抽象的な存在は抽象のままでもまったく困らないので「鍵の君」という抽象や、もっと言うと「藤原千代子」と名のついた抽象(キャラクターとしては現実と映画が混濁しているので固定される訳もない)をそのまま受け入れちゃってましたが、一般に抽象は具象に比べると感情移入しづらい対象であるのは確かです。
あの映画自体は具象をものすごく取り替えながら語っているので構造的にどれか一つ唯一の「具象」は描くことは困難でしょう。改善点とかそういうレベルのものではそもそもありません。
ただ、そういう感想が出るくらいには「抽象」では足りない人というのはいるんだなぁ、と思いましたことよ。