らくえん あいかわらずなぼく。の場合

というわけでいろいろ総括。


傑作です。
いや、傑作と呼ばれているのは知ってたんです。手に入れたのも割と古いんです。遊んでる余裕がなかっただけで。
ゲーム制作者がわざわざ嘘を重ねて作ったゲーム制作ゲーム(たくさんあります。「セガガガ」とか「涼宮ハルヒの戸惑」とか)のなかでも、群を抜いて嘘っぱちです。途中、素人(しかし、もっとも事務処理能力は高い。クリエイティブな部分以外ではダントツトップ)の妹一号に「ここの人たち、ゲームの作り方知らないみたいなの」といわれるぐらい。
どのシナリオも等しく痛い。痛いけど、この痛さが判るのはオタク上がりのプロだけのようなニッチな痛さな気がします。いや、知り合いに多いのでなんか人口比に対して多い気がするのですが、実際の人数ではごく少数でしょうね。
キャラは萌えます。ものすごく感情移入します。明らかな萌えキャラである妹一号ですらも属性で萌えるなんて柔なことはしません。キャラクターが「主人公を好きでなければならない理由」がものすごく強いので、どんなおかしな展開になっても、「この人と一緒になら生きていける」とエンディング時に思えるのがいとおしい。エロゲーにはなりませんが、マーキーやカントクのシナリオも欲しかったなぁ。旧ミニミソフトの男性陣、伝聞でしか話に出てこないんだもん。
あと、キャラがあまりに立ってるので、マーキーもカントクも田中さんも恵さんも創作にどういう意味を持って取り組んでいるのが凄く見たくなります。声も聞こえてきます。入ってないのに。
何よりも、「堕落する準備はOK?」というキーワードが何度も出てきます。かなり、実際には逃げられます(もちろんゲームとしてはバッドエンドになるけど、人生的には多分そっちの方が順当)。選択肢に明確な意志を感じます。「堕落しようぜ。堕落は楽しいぜ。当人がそれを望んでいる限り」というメッセージです。何せエンディング最後の一言が「r u ready 4 fall?」なんですから。
フラグが立たない(けど逃げない)際のエンディングが、好感度はじめからMAXの妹一号に流れる傾向がある(なので、何度もこのエンディング見てる)のがまたテーマに輪をかけています。ここだけサービスなんですよね。現実には妹に惚れられて仕方がないなんてのはレアケースで、その子が「たかがゲーム。たかが受験。たかが人生。落ちるところまで落ちよう」と言ってくるというのがものすごい象徴的です。たかがゲーム、それもそれまでに吐血から精神疾患まで(いや、これ、明らかに過労だ)人として壊れる直前まで来てるのに「どこにいく? 北? 南国? どこでも良いよ。にー兄ちゃんと一緒なら」と聞かれて、行く場所は開発現場しかないって辺りですでに終わってます。落ちるところまで落ちてるのなら、行けるところなんか開発するくらいしかない。義務感でもない、強制でもない、ただ、一番行きたいところが「開発現場」。そのせいで死にそうになってるのに。
圧倒的に幸せになることはないし、現実的にも満たされることはあんまり無い、けど、「なにか創ってないと死んじゃう」という流れは感動的ですらあります。


あと、旧ミニミソフトの人たち!
素晴らしいです。仮想敵なのに超仲良し。美柴さんが田中さんを毛嫌いしている理由が「自分を気遣って自分の理想と信頼を砕いた」というところとか、カントクのひょうひょうとしたところとか(御守さんを取り合ったって、あれ絶対嘘だ。「良いとこ見せようとした」のは確かだろうけど、美柴さんのストにつきあったので結果的に田中さんと別れざるをえなかっただけだ。御柴さんがカントクを拾ったんじゃない。カントクが御柴さんを連れて逃げたんだ。御柴さんのために)、もう、性別とか年齢とかまったく無視。上下関係もなし。カントクが偉くないんだもん。
意識と思い入れさえあれば、あとはなんとか。思い入れれば覚悟は自ずと出てくる。思い入れられない人は覚悟しないし、思い入れても覚悟できないならその程度。くそったれな世界だけど、自分たちがこれを楽しいと思っている限りそこはまさに「らくえん」なんですね。今回はたまたまゲームソフトの話だったけど、ゲームソフト作りだけじゃなくて、全ての活動において。
「あいかわらずなぼく」といいながら、ものすごいポジティブなゲームです。
素晴らしかったです。惜しむらくは、月面基地前の人たちのゲームがもう遊べないということ。あぁぁ(;_;)。