ワナビ・プログラマー

作家とかになりたい人のことを、その筋の隠語でワナビ、と言うそうです。語源がわかりやすいなぁ。何となく作家になりかけの(大概は結構うまい)人は、ハイワナビ、と言うそうな。徐々に語源に近づいていますな。


で、ワナビは作家の世界だけではなく、プログラムの世界にも結構います。たとえば、 Florian の教えている魔法学校なんかはワナビの群れですし(一瞬でデビューしちゃうけど)、コミケなんかに行くとかなりたくさん見られます。
で、この手のワナビプログラマーは、実は、純粋にプログラムを作りたいという意識があるわけではありません。あくまでプログラムは手段であり、実現したいのはたとえばゲームだったり、何かのコミュニティの為のソフトだったり(掲示板とか、アップローダとか)、かなり近視眼的に限定されます。
なので、ワナビ相手にプログラムを教える際には、プログラムを作る際に知っておかなければならない最低限の知識(大方これが、無味乾燥なんだわ)や、プログラムとして論理化する際のもっとも楽しい(はずの)情報科学的なところは巧妙に避けて通る必要があります。じゃないと一瞬であきるので。
まぁ、プログラマーはどの世界であろうともなぜか足りていないので、ワナビがその筋でプロになるのは大して難しくはありませんし、当初予定していた何か(ゲームだったりCGIだったり)は割合早い段階で予定していた約5割くらいまではたどり着きます。そこまですらもたどり着けないのは大概ワナビとして意識が低すぎるだけ(それまでの勉強の成績などは、今まで見てきた限りでは全く無関係)なので、それ以降続けても芽が出ることはほとんどないですし、たどり着いたあとでプログラミング自体が楽しくない人は早々にプロをあきらめた方がいいのは、以前書いたとおり。


でも、ワナビではなく、本格的にコンピュータをやりたいと思ってしまった若い人には、良くこんなことを言います。
いいから大学に行け、と。
ぶっちゃけ、少なくともコンピュータで本当にプログラムを組むような業界では、学歴あんまり関係ありません(初任給では少し差がでるかも)。コンピュータ業界でも、プログラムと関係ないところは学歴で箔をつけたりしますが、まぁ、それは一般職のサラリーマンとしては当たり前ですね。
大学生のレベルが鰻登りに落ちて(??)、大学で教える教育のレベルもかなり下がっているといういやな話を聞くご時世ですが、それでも、一応コンピュータを中心においた学部であれば、アカデミックな世界の端っこぐらいはのぞけるはずです。この、端っこでもいいから覗いてみるというのが、実は結構いろんなところで効いてきます。
情報科学というのは、直接ゲーム制作や、ツールの作成に役に立つような学問ではありません。もっと地味で、聞いてみると直感的に当たり前のようなことをこねくり回すことの方が多いです。
でも、この地味ーな部分がある日突然自分の持っている問題に当てはまる日が来ます。そのとき、地味な何かを知っていなければ、当然のように単純な解を見過ごしてしまう羽目になります。
そんな、直接役に立たないように見えるアカデミックな部分を、端だけでも知っておく、もしくは、どこを当たれば先人の知恵が探せるのかを知っておくだけでも、かなりいろんな意味で役に立つに違いないと思えるのです。
そのためのとっかかりとしては、情報系の大学は今でも最適だと思うのです。


もちろん、大学でなければこれらの知識が手に入らないなんてことはありません。幸い、今なら学会の資料もネット経由で検索できますし、研究成果のソースなども大概オープンソースで公開されています。
網羅すべき知識の量は、他の業界に比べれば決して広くなく(あくまで比較です。絶対量は結構あります)、アンドキュメンテッドな部分も割合少な目です。
なので、アカデミックな知識を身につけることは、意識さえしていれば割合何とかなります。
むしろ、意識がそれほど高くないという自覚があるのであればなおさら、まずは大学に行って4年ほど人生を無駄にする(おいおい)という覚悟が必要かなぁ、と。


ちなみに、今までみたワナビの中で、もっとも強烈だったのが、台湾の大学生でした。
なぜか彼にゲームの作り方を教えることになって、まぁ、順当にいろいろ作れるようにはなってきたのですが、ふと彼から相談を受けました。
このまま大学に残ってコンピュータをやるべきか、それとも今すぐ日本に行って、あちこちのゲーム会社を受けるべきか、と。
もちろん、私は大学に残ってゲームとは無関係でもコンピュータの勉強をすべきだ、とは答えましたが、それに対する彼の返答がかなり強烈でした。
大学を出て(22歳)さらに兵役に2年行ったあと(24歳)で、日本の企業がとってくれるとは思えない。だったら今すぐ行って、しばらくどこかの企業に潜り込んでからの方がいいのではないか、と。
兵役かぁ……。まぁ、国民の義務だしなぁ。
その間のスキルの低下や、時代に取り残される感覚を考えると何とも言えませんが、個人的にはそれでも大学で学べることはそこそこ重いと思っていたので、一応その旨伝えましたが、結局その後彼がどういう道を進んだのかは聞いていません。