ドラゴンフライ(下)(asin:4480860584)

ブライアン・バロウ。
面白かった!
よくもまぁ書いたもんだって感じの力作でした。マイケル・フォールとIVAの話なんか何度読んでもドキドキもの。文庫版を探そう。うん。


それにしても、いろんな意味で考えさせられます。末端技術者の Florian としては、「政治力」だけが結局世界を動かすという事実は残念ながら身に染みていますし、合理的判断は専門知識と共通の前提が双方にあって初めて成り立つものであるという当たり前の事実が重いです。
ISASNASDAJAXAに統合された後の風土の違いによる圧れき(この場合、ロシア役がISASなんだろうなぁ)や、ある程度大きくなるととたんに分裂を始めるオープンソースプロジェクトなど、程度と深刻さの違いこそあれ世界に散見される状況ではあるのですけど。
おりしも、新弟子が集まるイベントで、「作品を完成させるには、どこで身を引けばいいんですか?」という痛々しい質問が出た際に、よっぽどこの本の話をしようと思ったことか。本来、創作行為に「合議」はあり得ないはずなのですが(そもそも、作品としては「コラボレーション」という欺瞞を認めていないので。制作過程自体は「コラボレーション」になってしまうことはあっても)そうも言ってられない現実はあるしねぇ。
ともあれ、面白い本でした。おすすめです。