OLPCの作る世界

前に途中まで書いて、自主的に没にしたネタの再掲ですが……。元ネタはid:propellaさんのhttp://d.hatena.ne.jp/propella/20060617/p1 です。


OLPC(通称「100ドルPC」)がハッカーにとってどれだけメリットがあるのかを、考えてみましょう。
まずは、一つ仮定を立てたいと思います。世界には「理想ユーザー/ハッカー比」(Ideal U/H)というものがあり、これが14.7:1と求まっています。ハッカーが多すぎても世界的には不完全燃焼となり、ユーザーが多すぎてもよい空気は醸せません。
そして、この値は社会からの要請によって決められているものであり、どちらかが多くなっても、淘汰などにより14.7:1におのずと収束する傾向にあります。このため、限られたパイの中でハッカーを養成する行為は、多くの場合残念な結果となります。


さて、今でも世界は多数のハッカーを求めています。コンピュータの進歩に対して、ハッカーの絶対数は明らかにたりません。かといって、Ideal U/Hは動かせない以上、すでに普及している欧米、極東地域などではハッカーの数は飽和状態にあります。
そこで、OLPCです。これは、今までコンピュータを使ったことがない地域に、各生徒が個人で使えるコンピュータを国策として配ろうという計画です。この結果、その教育効果とは無関係に、とにかく「ユーザー」が増えます。
たしかに、OLPCは決して高性能とはいえませんし、環境自体も独特です。でも、ハッカーにとって、基本ソフト、アプリケーション、言語などは何ら障害になりません。実はスペックですら問題にはなりません(これは、過去のハッカーがまったくスペックを問題にしていなかった事実からも明らかです。ハッカー当人は常に高スペックを渇望していたにもかかわらず!)。
コンピュータを使う人間の数が増えさえすれば、ハッカーは一定の割合で現れるのです。
ハッカーは、それまでの知識や、生活環境とは無関係に出現します。「ハッカーになる血」を持っている人は確かにハッカーになりやすい傾向にありますが、それだってIdeal U/Hに収束しようとする力の一因でしかありません。


いまでも、コンピュータ業界関係のエポックメイキングは、ハッカーからしか生まれていません。
ユーザーを増やし、同率でハッカーを増やし、その絶対数がある程度以上になったときにきっとやってくるはずのエポックメイキングの雪崩こそが、ハッカーに約束された次の千年王国への切符に違いありません。