脱線の話

時事ねた+被害者がいる話はあまりしたくないのですが……。
被害者の方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。


なんか、脱線も被害の拡大も、ボルスタレス台車や軽量車体の、ありていに言って「近代技術」のせいにしている論調がかなり多くて、個人的には技術の後退を招きそうな世論の流れが怖いです。
ボルスタレス台車が、枕張りがあったころのものに比べてヨー方向(ないしは横滑り方向)の力での踏ん張りが弱い傾向があったとしても、想定範囲内の力に対してしっかり働くという意味では設計側の、もっと言うと、設計の元となった仕様を立てた(プロデュースした側)側の問題でしかないです。ボルスタレス台車だって、枕張りがあったころの台車と同じくらいの安全係数を取ることはできるでしょうし。
軽量車体も同様です。軽量車体は、正面からぶつかることはすごくあるけど、横から突っ込まれることは起こらないものとして作っていますが、今よりは重くなるにしても、軽量でやたらと頑丈な車体を作ることはある程度可能です。これもプロデュース側がその方針を採らなかっただけで。
「起こりえないことを想定しない」「起こりえない状況を作らないために技術をつぎ込む」という方針でトータルコストを下げようというプロデュースの方針ですから。新幹線なんかはこの最たるものですよね。


どちらにしても、「起こりえないことが起こってしまった」のであれば、それがなぜ起こったのか、起こさないようにするにはどうするのか、という方向で進めないと、根本解決にはならないでしょう。
それは、人為的ミス(今回、そういう話が出ている)を少なくするための方法論だったり、線路の安全(今回、こういう話も出ている)を確保するための方法論だったり、まぁ、いろいろでしょうけど、間違っても、「旧型車体に旧型台車だったら被害が少なかったはずだから、今の車体を使うべきではない」という方針にはなってほしくないなぁ、と思っていたりします。


ちなみに、定常旋回での遠心力では脱線しえないという発表が正しいのであれば、何らかの過渡状態(急ブレーキとか)が原因なんじゃないのかなぁ、って気はしています(書いている最中に、似たようなことをいっている人を発見しましたけど)。
ATS-PATCがついていない路線とのことなので、速度超過時に自動でブレーキはかからないと思いますが、運転士や車掌などの誰かが何らかの原因(たとえば線路内に何かを見たとか、速度超過に気づいて慌てたとか)で急ブレーキをかけたとしたら、一時的に遠心力よりも大きな力が外側にかかる可能性は考えられますし。
なので、まだ原因調査の途上ではありますが、個人的には同様の事故防止のためにはATS-PATCの早期普及を願うのが建設的だと思っています。「起こりえない状況を作らない」という方針は十分に正当性があると思いますので。