打ち込みオーケストラ

思うところあって、打ち込みないしはゲーム内蔵音源オーケストラ曲をまとめて聞きあさってみました。
FM音源+PCMで無理やりオーケストラ風味にした曲(Edward RandyやKING OF DRAGONSやROOSTARS)は、やっぱり聞いていてほほえましいし、まともな音源と気を払った打ち込み(寺嶋民哉の一連の作品など)は聞いてて安心できるし、プロ用シンセサイザーでも昔の作品はやっぱり時代が透けて見えるし(^^;)、まぁ、いろいろ思うところはありましたが。
結果として一番印象に残ったのは、

  • (元)ZUNTATAの古川さん、すげー

って事でしょうか(^^;)。
明らかに音源としては劣るはずのTaitoZ基盤(FM4音+PCM。ちなみにSPACE GUN)でも、他の人が最近のソフトシンセで打ち込んだ曲よりもずっとオーケストラに聞こえるという。FM音源なので、音色なんか生音に全然似てないのにものすごくそれっぽいという。
Light Bringerなんか、その上OTIS音源の力もあって管も弦も息吹すらも感じられそうな具合の演奏が強烈です。
やっぱり、音源の性能単体よりも演奏(打ち込み)の腕と曲の膨らませ方が全体の印象を作ってるという大変当たり前のことを今更ながら思い知りました。
・・いや、違うな、その程度のことは知っていたんだけど、あらためておいそれと手を出せる世界ではないということを思い知ったというのが正確だな。いいサンプルを積んだソフトシンセがあれば、後はそれっぽい対位法でオーケストラの再現くらいできると思っていた自分の甘さを痛感したというか。
ちょっと趣味で手を出そうと思っていたんですけどね。


しかし、収穫もいくつかありました。

  • パーカッションに気をつけるとだいぶそれっぽい

やっぱり、ポップス・ロック系の打楽器とオーケストラの打楽器ってだいぶ差があるので、そこを変えるだけでもだいぶ違うようです。逆に、ドラムやベースをいれたリズムオーケストラはオーケストラだと思わせるのが難しいですね。

  • 楽器の音域の固定

楽典によるとトランペットとバイオリンとクラリネットの音域はばっちり被っているのですが、これをむりやり「ここの音域はストリングス」「ここの音域はミュートトランペット」と割り振っちゃって、音色が似てなくても気にしないという方針でも、かなりそれっぽくは聞こえます。
サクラ大戦」のサターン版はかなり頑張って音色を作ってはいますが、決して生音に似てるかというとそんなことはないです。でも、それぞれの曲はかなり頑張ってオーケストラしていますね。やっぱりこれって、打ち込んだ後のものを田中公平さん自身が聞いて、なんとかそれっぽくするよう編曲し直した成果なんだろうなぁ。
これが、「サクラ大戦3」のドリームキャスト版となると、かなりシンセサイザーの音色作りがうまくなって来て(っていうか、ヤマハXGをうまく再生できる音源を載せて来たというか)無理に音域を割り振るなんて事はしていません。でも、そのせいか、あの名曲「御旗の元に」の内蔵音原版は今一つのできだったりするんですけど(^^;)。

  • キーになるフレーズの和声学・対位法的展開

ロック・ポップスとクラシックの編曲の大きな違いは、和声やフレーズの対位法を積極的に取り入れているかじゃないかと思っています。「コード進行」なんてのは和声学のおいしいところだけをつまみ食いしたものだと思っているので、ロック・ポップスが和声を意識してないって訳じゃないんですけど、意識の方法とレベルが、ね。
オーケストラは出自自体がクラシックだったりするので、クラシック風味の編曲がなされていると、確かにオーケストラっぽく聞こえます。昔のカプコンFM音源オーケストラ(Black Dragonとか)が、かなりほほえましい音色でも一応それとして認識できるのはやっぱり編曲のなせる技なんでしょうね。

  • 和音の数じゃない

もちろん、オーケストラの醍醐味はいろんな楽器の混合による音圧にあったりするので、たくさんの和音(パート)を重ねるとオーケストラっぽくなります。
でも、いろいろチップチューンを聞いていると、パーカッションも含みで6音もあればオーケストラとして認識させるには十分って気がして来ます。それは、今まで挙げたいろんな技術を組み合わせた上で、の話ですけど。
しかし、この意味で一番強烈だったのはSSG3音+ノイズのゲームギア版SHINIG FORCE外伝1がなんとなくオーケストラに聞こえるって事ですな。
音色も何も有ったものじゃないし、そもそも和声で楽器を表現することができる訳でもないのに、イントロはちゃんとバイオリンのスタッカートに聞こえるし、メロディーはブラスかチェロに聞こえるという。
そう思って聞いていると、同じ曲を使ったMEGA-CD版が全く同じ構成で打ち込みオーケストラで演奏しているんですよね。うわー、すげー。
当時、作曲の武内さんが雑誌のインタビューに答えて、「一音一音の意味や役割をすべて計算して作った自信作」と言ってましたが、しみじみ聞くとあの言葉の意味が分かります。


うーん、やっぱり、ソフトシンセに手を出す前に、GMの内蔵音源でもう一度勉強しなおそうかなぁ。昔音楽理論を片っ端から漁った時の本、なぜか今もうちにあるんだよね(^^;)。