桜坂消防隊

なにげに新生アイレムのゲームって結構好きです。「激写ボーイ」も「R-TYPE Δ」も「絶体絶命都市」も「R-TYPE Final」もかなりいい印象をもっています。なぜかタイミングが合わず購入できなかったタイトルが多いのですが(^^;)。あー「U-underwater unit-」も欲しいと思いながら画面すらも見たことなかった(店頭に並んでないんだもん(^^;))んだよなぁ。
で、アイレムにしては(失礼)広告による露出が多いこの「桜坂消防隊」ですが、実はかなり早い段階で店頭で体験版をやって以来気になっていました。このゲームに限って言うとどこを楽しんでいいのか広告からでは解りづらいので、体験版を配りまくるといういつものアイレムのいつもの広報方針はかなり当たっていると思います。実際、 Florian も店頭で触るまではゲーム内容もおもしろさもよく分かりませんでしたし。


桜坂消防隊」は消防・救助活動をネタにしたアクションゲームです。基本的にはプレイヤーが消化器具(水とか、消化剤)を使って火災をくい止めながら要救助者を捜し回るという割合地味めな内容をゲーム化しています。何せ、明示的な敵もいないし、巨大なボスが行く手に立ち塞がるって事もないし。
で、4ステージまでクリアした Florian の第一印象としては「きちんとおもしろい」、これにつきます。あ、いや、ゲームなんだからおもしろく作られていることは当然なのですが、奇をてらったシステムや分かりやすいカタルシスの見えづらいゲーム目的を引っ張ってくると、ややもすると「やりたいことは判るけどつまらない」ゲームになりがちなのですが、さすがにアイレムの人達はその辺のさじ加減をわきまえています。炎とそれによる世界の変質とそれを「消火する」事によるインタラクションがきちんと作られているので、操作を習得するうちにカタルシスがきちんと見えてくるように作られているのです。そのうち、炎が完全に消え切った時の「じゅっ」と言う音が快感になって来ますし。
とくに、2ステージ目のビルの一番最初のフロアは、操作に手間取っている間に何度もゲームオーバーになりました。いや、むしろ、操作よりも「ゲームの進め方」に気づくまで何度もやり直したって方が正確かな? 仲間を分散させ、的確に梯子車による散水を行わないとあっと言う間に延焼しちゃうし。炎が単純なオートマトンの原理に沿って動いているので多少進めると有利な方法を見つけることができるのもいい感じです。
いや、なかなかこれはいいゲームですよ。


やっていてしみじみ感じるのは、このゲームを企画した人達は、 Florian 的には今でもSONICTEAMの最高傑作だと思っている「バーニングレンジャー」が好きだったんだろうなぁって感触ですね。
確かに火災現場で救助という元ネタを同じくするゲームですので芸風が似るのは判るのですが、それ以上にあちこちにオマージュが感じられるのです。なにせ、やっぱり元ネタを同じくするHUMANの「ザ・ファイヤーメン」にはあまり似てないし。
もっとも、「バーニングレンジャー」は炎を消すとなぜかアイテムが出て、アイテムはなぜか体力であり、なおかつ救助に必要であるというルール的なアクロバットがありましたが、「桜坂消防隊」は「バーニングレンジャー」でルール的な飛び道具を使わざるを得なかった部分をなんとかして正統派にやっつけようとあちこち腐心しているところを感じられます。
ついでに、「バーニングレンジャー」ではゲーム本編部分をとにかくとにかく何度も遊んで欲しいという意図の元、プレイ回数によってリリースされる新要素やマップ自動生成をルールの中に込めていましたが、「桜坂消防隊」では同じ意図を別の方法で実現しようとしているのが興味深いです。軽いアドベンチャーゲームとアイテムの推理をゲームの本編内に、*ゲーム本編を阻害しない形で*(重要)込めることによって、プレイヤーを複数回プレイの先へと進めさせようとしているのもなかなか興味深いです。
特に、物語の真相がただエンディングにたどり着くだけでは判らないようにして、さらにその真相が「ある」と明言しているのは最近のゲームにしてはかなり硬派だと思います。なにせ、マニュアルに「真相を探せ!キャンペーン」と銘打って、アンケートはがきに事件の真相を元にしたクイズの答えを書かせるぐらいですから。ゲーム世界の広さに言及するのは、昔はよくありました(「金のしおり」とか「ガラスのカボチャ」とか)が、最近では見かけなくなりましたしねぇ。
さすがにまだ最後まで真相を見ていないので、実はすごく肩透かしの可能性はありますが(^^;)、方針としておもしろいなぁ、と。


表現も結構いかしていると思います。特に音響表現。基本的にほとんど音楽は無いのですが(なにげにこれも「バーニングレンジャー」を踏襲してたり)、何か起こるたびに短いME(MusicEffect)を流して緊張をあおります。「絶体絶命都市」でも音響回りに妙な力を割いていたアイレムですので、今回も効果音にかなりこだわっています。通低音として炎の燃える音がずっと響いてるのは実は画面の印象をかなり補強しています。逆に、低音が聞こえない環境では、残念ながらあんまり臨場感ないかも(^^;)。ヘッドホンやきちんとしたスピーカーをつないでのプレイをお勧めします。全然違うので。いや、ほんとに。
ほとんど鳴らない音楽も、実際には結構クオリティ高いです。音色としてはオーケストラ風味、それも、いかにもシンセサイザーで作りましたという事がばれてしまう打ち込みではありますが、低音と打楽器を効果的に使った曲になっています。
その上、ふだんの音量が小さめなので、効果音や台詞を聞こえるように出力音量を大きくしておくと(あ、もちろん、ゲーム内メニューでBGM/効果音の音量は変更できますが)、ここぞというところで一瞬だけながれる音楽にかなり強い演出的意図をもたせることに成功しています。まぁ、使い方としてはBGM/効果音のバランスからしてハリウッド映画風味ということもできますが。
あと、先に、ルールとして多人数での連携が必須という話をしましたが、連携している人達のせりふもいい感じです。もちろん、ゲーム中に無駄話をしまくる非常識さはないのですが(そう考えると「バーニングレンジャー」は無駄話しまくりだったな(^^;))、一応軽い立体音響風味の音場で、遠くから「だれかいないっすかー?」などとかすかに聞こえてくると駒として便利に使っている仲間が「生きている」ように思えてきます。


あ、一応技術者としての視点からちょっと。
ポリゴン数をかなり削減した背景とキャラクターをして「いまどき」という人が雑誌などでいますが、あれは、仕方ないと思います。PS2はフレームレートを60fpsに保たないといろいろ問題のあるハードウェアで、なおかつ半透明描画にちょっと癖があるため、あれだけの炎を画面一杯に出し、水や消火剤も画面に出し、果ては同行隊員ウィンドウにまでレンダリングしていることを考えると逆にかなり頑張っていると言えるでしょう。一部「スプリンクラー」の描写でレンダリングの方法がばれちゃうシーンはありますが。


と、まぁ、そんなわけで「桜坂消防隊」は Florian 的には期待を裏切らないソフトなのでした。
惜しむらくは、今の Florian にゆっくりゲームをやる時間が無いって事ですね。リビングのオーディオにつないでゆっくり遊びたいなぁ。