アンプを飼う

おお、久しぶりに飼育シリーズだ(タイトルが)。


Florian 宅のリビングには、 Florian が幼少のみぎりから連綿と受け継がれて来た骨董品オーディオが鎮座ましましています。
もともとは、 Florian が実家にいたころにリビングで使っていたものだったのですが、アンプに限って言うと20年もの、スピーカーに至ってはもうすぐ30年というお爺ちゃんばかり。ただ、当時の父親はオーディオマニアというか、単にオーディオを仕事にしていたというか(^^;)、そこそこの物を買い揃えたらしく今見ても遜色の無いコンポーネントばかりです。
スピーカーはLo-D(日立)のHS-530というアルミ板で作られたメタルコーンのウーファーとスコーカーを持ったもの。今でこそあんまり見かけなくなっちゃいましたが、感覚として言うと、他のスピーカーに比べて「締まりのあるそれっぽい音」がします。スペック的にはウーファーなどでコーンに力をかけても歪みが少ないので2倍近くの速度を与えることができるとか、そんなことを言われていたと思います。
アンプはDENONのPMA-780D。これはやっぱりLo-DにもOEM提供していた120+120Wのプリメインアンプで、出初めのころのD/Aコンバータを積んだモデルです。出初めなので、光デジタルじゃなくて同軸デジタルという世にも珍しいものだったので、実際にディジタルでつないだことはあまりないのですが(オーディオテクニカに光->同軸デジタル変換器っていう不思議デバイスがあるにはあるんだけど、なんとなく手を出せない(^^;))、さすがにアナログアンプ部分は大変凝ったものになっていて、総重量15kgの大半を占める巨大な電源は左右それぞれで別系統を持つという贅沢さ加減。きちんと鳴ると、余裕ある音が鳴ります。
ええもう、*きちんと鳴る*と。


ところが、完調時のPMA-780Dは確かにすばらしいのですが、うちのアンプは実は買った当時から妙な癖があるのでした。
まず、左チャンネルにハムノイズが乗ることがあります。ハムノイズは、ちょっとした弾みで出て来て、ちょっとした弾みで引っ込みます。それは例えば振動だとか、筺体を止めている金属ネジに触るだとか。ハムノイズが乗ると、当然ながら音に影響を及ぼしますし、ディジタルinはデコードできなくなります。ディジタルinまで影響するって事は、増幅するブロックだけじゃなくて、システム全体にハムの影響が行っているということが分かります。
更に、起動直後、左チャンネルから音がしなくなることがあります。再現性自体はあまりないのですが。これは、聞いている最中にも「ぷつっ」と途切れてそのまま左チャンネルが無音になることがままあるのがどうにもやっかいです。
これに関してはボリュームをゆっくり上げて行くとある一定以上の音量になった瞬間におもむろに復活するにですが、場合によっては、以下の状況になる事があったりします。

  • 左チャンネルが途切れる
  • その直後の音量が大きくなって一瞬復活
  • 復活直後にまた途切れる
  • 繰り返し

そりゃもう大変音が歪みます。


もちろん、何度も修理に出しましたよ。だって、買った直後から何度も起こってたんですから。でも、何度出しても「状況が再現しませんでした」ばかり。
そのうち、状況をいなす方法を会得してしまい、あきらめてそのまま使うことに。
まぁ、起動直後や途中で音が途切れる事があるのを我慢すれば音自体はいい感じなので、同じレベルのアンプを買うほどの踏ん切りはつかず、かといってわざわざこれよりも低いレベルの物を買うこともできずに実に20年使い続けてきたのでした。
ところが。
最近これがひどくなってきた気がするのです。
先の「接続-非接続断続の歪み」が多く起こるようになり、ごまかして使ってもすぐに元に戻るという感じで。
Florian 自身はあまりリビングにいません(というか、そもそも家に余りいない(^^;))が、さすがに放置する訳にもいかないなぁ、と。


そこで、アンプをとうとう購入することにしました。
コンセプトはこれです。

  • HS-530をきちんと駆動するアンプ
  • あんまり高くないやつ
  • どちらかというと音をいじらないもの

HS-530はまともに鳴らすには結構パワーがいるスピーカーらしく、ワット数の少ないアンプだと今一つ本領を発揮しないことは分かっているので、せめて片チャンネル100Wぐらいは欲しいです。
たとえ、容量がきちんとあっても高いアンプはだめです。そりゃ、オーディオ道は修羅の道ですので、いくらでもお金を出す気になれば目指したスペックに近づくことは知っています。でも、「いやいや、アンプにそこまでお金をかけるならMediaWizを買おうや」とか、「それよりも、買いそびれていたCDを2、3枚」とか思わず考えてしまうので、とりあえずは自らに枷を。
そして、できることなら音をいじったりしない方が Florian 的にはありがたいです。どんなに安いアンプでも「ほげほげ回路で驚異の重低音が」とか言われても困っちゃいますし、「真空管のワームな感触が」って言われても、単に音がボケてるだけじゃって思っちゃうし。原音再生であって欲しいです。できれば。


と、いうわけで買うか買わないかはさておき近所のヨドバシに。
スピーカーのコーナーを冷やかして、楽器を一通り見た後でプリメインアンプのコーナーへ。一通りワット数と値段の相関を見た後で、今度はAVアンプのコーナーへ。
一通り見た後で、近くにいたオーディオ担当らしき店員さんに声をかけてみました。
「あのー」
「はい」
「AVアンプって言うのはスピーカーを6つつながないと使えないものなんですか?」
「いや、スーパーウーファーに関して言うと、なくても大丈夫です。音質に影響しませんので」
やっぱり影響しないのか(^^;)。
「センタースピーカーも実際には要りません。正面2つのスピーカーにきちんと割り振られますので、音自体は聞こえます」
へぇ。それは知らなかった。
「DVDなどのマルチチャンネルを再生しない限りは最悪後ろのスピーカーも要りません。この辺のAVアンプはヴァーチャルサラウンドがついていますので、マルチチャンネルのソフトでも2つのスピーカーで鳴らすこともできます。定位は薄れますが」
・・それはぶっちゃけすぎって感じも(^^;)。
「どのような使い方をするのですか?」
「いや、単にオーディオとかビデオとかを再生するためのアンプが欲しいだけです。使って来たアンプが壊れちゃって。さっき、ピュアオーディオ用のアンプを見て来たんですが、チャンネル辺りの出力が同じなら、6チャンネルあるはずのAVアンプのほうがなぜかずっと安いなぁって」
「それは簡単な理由ですよ。AVアンプの方が安い部品を使っているからです」
・・これまたえらいぶっちゃけた話を・・。
「今時のAVアンプは電源や増幅段をチャンネル毎に用意するようになったのでだいぶよくなりましたが、まだまだプリメインには足元にもおよびません。同じくらいの音質を望むのなら、倍くらいの値段の物を買うべきですね」
と、いうわけでプリメインアンプのコーナーへ。
「今買うならDENONのプリメインがお勧めですね。容量に合わせて3種類ありますが、一般の家庭で使うのでしたら、PMA-390IVがお勧めです。いい物は筺体が大きいので」
「大きい?」
「奥行きが違うのです」
あー、なるほど。2番目のPMA-1500がちょうどうちのPMA-780と同じぐらいの大きさです。いや、うちのはかなり大きい方ですけど。


ついでにもう一つ気になっていたSHARPの1bitオーディオのアンプについて聞いてみました。
「ディジタルアンプと商品の名称的には格好いいのですが、ピュアオーディオ方面ではあまり評価していません」
それはちょっと意外。
「あれはミニコンポの範疇ではまあまあなんですが、従来のオーディオとは技術的な断絶があって、同様の評価は行うことができないと思っています」
へぇ。
「オーディオという観点から見るとアナログオーディオの方が技術の蓄積も大きいですし、ねらった音がきちんと出ますね」
売っている人はそう見ているんですねぇ。うーむ、理屈はさておき参考になるなぁ。
いや、気になっていたSD-SG11は25W+25Wなので、ディジタルアンプの高効率を考えてもうちのHS-530を駆動するには非力なんですけど(^^;)。


と、いうわけで、出力容量的にはちょっとダウングレードになりましたがお勧めされたDENONのPMA-390IVを買って来ました。
実はCECイコライザーすらもついていないアンプ(AMP-3300)も気になったのですが、予算の範疇外だからあきらめ。1.5倍もするんだもんなぁ。直接ゲインをコントロールする(そのうえ、ボリュームの形状がおもしろい(^^;))という素敵な音量調整メカニズムが気になったんだけど。先日、Eclipse TD 508を聞いて来た時に使っていたアンプで、スピーカーのせいもあるんでしょうが、結構いい印象あったし。


早速据え付けての印象を。

  • 小さい
  • ボリュームを大きくする必要がある
  • 音は変わらない
  • きちんと鳴る(笑)

小さいのは、うん、小さいです。奥行きもないし、天地方向にも薄いし。もともと Florian 宅のオーディオラックはあんまり天地方向に余裕のある造りになっていないのですかすかって感じでもないですが、ちょっとだけ違和感ありますね。
むしろ違和感は、ボリュームの位置の方が大きいです。今までいろんなアンプを使って来ましたが、そのどれも、「9時」ボリュームを大きくしたことがありませんでした。ようは、それぐらいの余力のあるアンプをずっと使い続けて来たって事です。単に大きな音を出せない環境だったって事でもありますが(^^;)。
これが、 Florian 宅のリビングで、DVD(これまた、ダイナミックレンジを稼ぐために通常の音量は小さめになっています)を適性っぽい音量で聞くと、実にボリュームの有効位置が10時ぐらいになるのです。ボリュームなんて、実際のデシベル数で語らないと意味がないことは分かるのですが、単に感覚の問題として9時より上を実用にするというのが不思議な感触だったというか。
音質に関して言うと、凄く変わったという印象はありません。昔、一時期ONKYOの50W+50WのアンプでHS-530を駆動していた時にはPMA-780Dに変えてあまりの音質の違いにそれはそれは驚きましたけど、出力容量的にはダウングレードにもかかわらず音が変わった印象はほとんどありませんでした。さすが名器・・というよりも、 Florian 宅ではこの程度の出力容量で十分だったって事ですね(^^;)。大きいの買わないでよかった。どのみち予算範疇外だったけど。
そして何より、きちんと鳴ります(笑)。当然ですが、数時間音楽だ映画だとずっと使い続けて来ましたが、一度も「左チャンネルが途切れる」事も「断続的なスイッチングで歪む」事もありませんでした。すばらしい(笑)。・・っていうか今までが曰く悪すぎ(^^;)。


しかし、なぜか Florian 宅で使っているアンプに共通する故障の傾向が気になります。

  • 片チャンネルだけ音が途切れる(ないしは極端に小さくなる)
  • 音量を一定以上に上げるとしばらく直る

PMA-780Dも、HS-530といっしょに買ったLo-Dのアンプも、ONKYOのアンプも同じところがおかしくなるんですよねぇ(それより前に使っていたPioneerのトランジスタアンプは別のところが壊れたな(^^;))。スピーカーやソースとなるプレイヤーに共通点はほとんど無いのに。
せっかくの今回のPMA-390IVも同じところ壊れたらやだなぁ。