Timedomain miniまたたび

すっかり竹本泉の「ねこめーわく」みたいなタイトルになってきました(^^;)。

リファラを見ていると、一番おおいネタが「Timedomain mini」なので、調子に乗ってまた。書いているうちに大長編になっちゃいましたけど(^^;)。

Florian がスピーカーに求めているのは、結局「心地よく聞こえる音」ではなくて、「元の人が聞かせたかった(で、あろうと思われる)」音であるように思っています。いろいろ紆余曲折あって、その結果ここ5年ぐらいはそういう結論にたどり着いています。

どんな音が「いい音」なのかっていうのは、多分人それぞれだし、もちろん Florian 自身もいろいろと思うところはあります。解析的方法論でその「良い音」の正体を探ったり、その音を作るためにはどうすればいいのかとか、いろいろ考えはします。

でも、世のCDにその観点での「良い音」と「悪い音」がある現状では、もともとの音源に対してわざわざ自分なりの音のよさを押し付けるのは、なんか、その音源を作ったであろう人の意図をくみ取れていないのではないかと。もっと言うと、本当ならば聞こえていたはずのすばらしい何かを聞きそびれているんじゃないかなんてなことを思ったりするのです。

ちょっと個人的な話をすると、 Florian は元オーディオマニアな父を持っていました。元、と言っているのは、父は仕事でオーディオをやっていた時にはえらいマニアックだったのですが、仕事の内容が変わった辺りから、だいぶオーディオから興味が薄れ、今となってはミニコンポで満足する位になっちゃったんですけど。

その兼ね合いもあって、 Florian 宅にはむやみに高性能なオーディオ機器がゴロゴロしていたのです。Lo-Dのメタルコーンの3way密閉式スピーカーや、密閉式ヘッドホンや、DENONの100+100Wのアンプや、3ヘッドのカセットテープデッキなどなど。父親がオーディオにあまり興味を示さなくなった辺りから、 Florian はこれらの機材をいろいろとこねくり回して、当時お気に入りだったいろんな音楽をいかによく聞くかをいろいろ模索していました。

真っ先に気づいたのは、テープよりもCDの方が圧倒的によく聞こえるということでした。かといって、CDをたくさん買い揃えることもできず、次善の策としてテープにコストをかけることにしました。ドルビーNRは、確かに高周波ノイズを減らしてくれますが、安いテープを使うと何かボケた音がしますので、せめてCrO2のテープを使い、それでもまだボケたり割れたりする時には録音音量を下げたり、泣く泣くドルビーNRを切ったりしました。

次に気づいたのは、ヘッドホンの方が、スピーカーよりも聞こえる音の種類が多いということでした。スピーカーの「体で聞いている」感も魅力的でしたが、明らかに大きなスピーカー越しでは聞こえなかった小さな楽器の音や残響が、耳元でなっている小さなスピーカーからは響いてくるのです。当時、はやり始めたDTMや、パソコンでのMML打ち込みのアレンジのため、音のハーモニーにとても興味のあった Florian はどんな小さな音でも聞き漏らすまいと耳をそばだてていました。

次に気づいたのは、曲によってはアンプのヘッドホン端子につなぐよりも、CDプレイヤーやカセットデッキに直接ヘッドホンをつないだ方がよく聞こえるということでした。曲によっては、というのが微妙ですが、何か、微妙に音が違うような気がするのです。さいわい、 Florian 宅のアンプにはイコライザーを通さずにパワーアンプに直結するボタンがついていましたので、これをOnにすると多少はましになることも明らかになりました。

さいわい、そのころにはイコライザーのなんたるかを知っていましたので、自分が「何」を指向しているのか、おぼろげながら判ってきていました。

とはいえ、家族と暮らしている家では、いつでもヘッドホンだけを使い続ける訳にも行きません。なので、 Florian は次善の策として、スピーカーでヘッドホンに似た音を作ろうといろいろ細工し始めたのです。お気に入りの、よく音が判っているCDを用意し、ヘッドホンをかけて聞いてはヘッドホンを外してスピーカーの場所とアンプのイコライザーを調節する、と。当時、 Florian の部屋にあったのはかなり古いパイオニアの紙コーンスピーカーとあまり出力の大きくないアンプでしたが、それでも丹念に調整すれば雰囲気ではヘッドホンにかなり近いところまでたどり着けることは判りました。

でも、居間に置いてある高級スピーカーと高級アンプでは、ヘッドホンで聞いた時に聞こえていた隠れている小さな音が何もしなくてもきちんと音が聞こえるのです。ヘッドホンで聞いた時のような頭の中に音源が出来るような直接感こそありませんでしたが、うまい録音をしてあるものだと、演奏自体が目の前で行われているような気がするところまで感じられました。

結局、物理層は乗り越えられないんだなぁ、と思い知りました。当然なんですが。

もちろん、それ以降もいろいろ細工をしました。ケーブルが長いと音が劣化するのであればケーブルに力をいれようとOFC(無酸素銅)のケーブルを買って来たり、逆にどうしても音量が落ち込む周波数を補正するべくグラフィックイコライザーを導入したり。でも、細工しても乗り越えられない壁ってのは確実にあって、結局ヘッドホン(というか、今はインナーイヤー)で聞くのが一番かなぁ、という結論になったりもしています。

ちなみに今はインナーイヤーではSONYのMDR-51EXというカナル型のを愛用してます。その前のモデルのMDR-70EXも使っていたので、実に合わせて4年近く。MDR-E888という高級モデルを使っていたこともあったのですが、使い方が悪いのか変なびびり音がするので、1年またずに使うのをやめてしまいました。MDR-51EXは、低音が強調されているとか中音域がそもそもないとかいう評価はあるのですが、 Florian はあまり気していません。それよりも、ささいな音でもきちんと伝えようとする感触がうれしいです。

閑話休題

で、Timedomain miniです。メーカー自身の広告や、あちこちの批評で言われていますが、タイムドメイン(時間領域)の発想自体は大変明確で、「鳴ってる音は全部聞かせる。鳴ってない音は聞かせない」が、基本スタンスのようです。

もちろん、これをやるのは結構大変で、スピーカーの径が小さいと大エネルギーを持つ低周波が再現出来ないし、逆にスピーカーの径が大きいと、コーンの慣性で振動が信号に追いつかないし。スピーカー自身は剛体なので、設置されている構造物には固有振動数があるし、キャビネットがある程度閉じた形状になることを考えると共鳴する部分は原理的になくならないし。

ま、この辺の実現のための理屈は、タイムドメイン社のノウハウなのでしょうし、実際にどこまで実現できているかの定量的な判断はちょっと難しいのですが、少なくともこの方法論自体は Florian の今のところの求めている物にかなり近しいです。そして、 Florian の耳を信じるのであれば、かなり良い線まで実現しているような気がするのです。

結果、すばらしい「録音」(ないしはマスタリング)が行われている音源に関してはすばらしい世界が、それなりの録音になっている音源に関してはそれなりの音が再現されているように思えます。

もちろん、哺乳動物の聴音器官が、fドメインで行われていることは知っています。蝸牛器官が何で渦なのかと言えば、延ばした時にコーン状になっていてほしいからですし。そういう意味では、周波数に合わせていろいろ細工をしても、人間の耳から聞き取られる音は元のものと区別がつかないかも知れません。

ですが、解析や細工で進める方向性で、簡単に元と同じ音が作れるとはさすがに思っていません。世界には計算誤差というものがあり、信号には必ずノイズが乗り、解析する解像度には残念ながら物理限界があります。それが、実用上問題のないレベルまでたどり着く日はいつかくるかも知れませんが、じゃあそのレベルはどの辺りなのかというと、それは目指す方向によってまちまちです。

そういう意味では、解析をなるべく行わず、元の波形のまま出そうという方法論のタイムドメイン(時間領域)の方が、割合簡単(?)に「再現」は出来るのかも知れません。

・・なんてなことを書いていると、もっと凄い(らしい)Yoshii9や、にたような方法論(らしい)SONYのSRS-Z1何かも気になるような気がする Florian なのでした。