Timedomain miniしばらく

仕事場で、今のところ Florian 以外に人がいない事をいいことにずっと愛用しています。他に人がいると、その人に聞きたくもない(と、思われる)音楽を聞かせてしまうので、スピーカーって使えないんですよね。

そもそも、普通にモノラルで取った楽器を何も考えずにミックスしたものを聞くのには向いていません。で、残念ながら Florian のもっている曲の大半はゲームミュージックなので、そりゃもうトラックダウンも何も有ったものではないのですが、こういう音はそもそも「真っ平らな板の上に何かが並んでいる」音場が構成されます。楽器そのものが板という方がいいのかな?

これが、きちんとしたミュージシャンのきちんとしたミックスの曲を聞くと、「この辺に楽器を置いたように聞かせたい」ってのがおもしろいぐらいに聞こえます。まぁ、それでも「奥行き」を感じさせるほどのミックスはあんまりありませんね。具体的には2つのスピーカーを結ぶ直線上に楽器が並んでいるようなイメージ。所詮、パンとトラックダウン後のリバーブだけでは限界ありますやね。

もっとも、そう言ったミュージシャンの曲のほとんどは、「一番聞かせたい音」の音像定位に関してはすごくこだわっているので、少なくともそういうトラック(まぁ、一般的にはボーカルですが)に関してはあたかも目の前に小さな人(もしくは楽器)が発生したかのように感じられます。

ま、これだけでも結構楽しいんですけど、もっとおもしろいのはライブ盤。特に最近よく聞くのが谷山浩子の「Memories」のDisk2なんですが、これがなかなかすごい音がします。

ライブなので、そもそも音質がピュアになるって訳ではないですし、マイクだって、レコーディングスタジオのきちんとしたウィンドシールドをかましている訳ではないので、唾液や吐息の飛び散る音や、PAで合成した音を出しているスピーカーの場所(コンサート会場の何カ所にもおいてある)や、生音でも十分大きなピアノの位置と、その音がどれくらいPA経由で鳴ってるかとか、下手をすると、反響の具合からその会場の大体の形状まで分かってしまうという。

特に、「Memories」はあちこちの会場で取ったものを1枚のアルバムにまとめているので、曲によってかなり音場の構成が異なるため、「あ、これはさっきの会場だな」とか音を聞いてなんとなく分かるのですよ。

CDなどの場合、アンプやスピーカーってのは、本来音源の持っている波形をなるべく崩さずに鼓膜まで伝えるっていうのが理想だと思っているのですが、そういう意味では今まで使って来たどんなスピーカーよりも「再現性」の一点においてはこのタイムドメインminiはすごいんだろうなぁ、とちょっと思ったりします。

もちろん、ネット上に存在する使った人の感想で「そんな大騒ぎするようなものでもないでしょ」という声があるのも判ります。だって、一般的なスピーカーは、「良い音」と呼ばれる周波数分布に仕立て上げるためにいろいろ細工していますし、それ以上に、音源(CD)自身がそういうスピーカーで聞かれることを前提にしたトラックダウンをしているのであれば、想定よりもずっと貧弱に聞こえると思います。

でも、以下のような条件があらかじめ整っているのであれば、Timedomain miniはすばらしい再現性を発揮すると思います。

  1. 残響があるホールで録音
  2. 2本以上のマイクで録音
  3. 正面以外の位置にも楽器を置く
  4. 楽器の位置は前後方向にもずらす

で、なおかつその録音の場で聞いても「すばらしい」と思えるような演奏であれば、Timedomain miniがすばらしい物に見えて来ます。

・・惜しむらくは、そこまで揃った音源ってのは決して多くないのですけどね(^^;)。やっぱり、当然ですけど一般的なミュージシャンの一般的な音源は、一般的な環境で再生されることを期待しているし、立体的な音場なんてどうせ聞こえない物にこだわるくらいなら、もっと他に力を割くだろうし。

でも、 Florian はこのスピーカーの方向性、結構好きです。それが万人に勧められる「すばらしい音」かどうかはちょっと微妙ですが、新しい世界を見たい人は手を出してみてもおもしろいかもです。再現性(だけ)過多の不思議な世界へようこそ(^^)。