狼と香辛料

うむ、よいケモノじゃった(うつってる)。


個人的にはストーリーは盤石に進むことがあらかじめ判っているので、「わざわざアニメにする意味」を中心的に見てきたのですが、これは、アニメにする理由が凄く強い作品でした。
まず背景美術が凄い。美峰の背景は凄いよね、という単純な理由ではなくて、山なら山の、町なら町の背景の説得力が素晴らしい。ハリウッド特撮ファンタジー映画の「どこかから借りてきたファンタジー感」ではなく、ストーリーや世界観から逆算された美術は見ていて圧倒されます。凄く些細な町の景色一つ取ってもヨーロッパ中世「風」ファンタジーがうまく実現されてます。
あと、音楽。吉野祐司のヨーロッパ古楽趣味が画面に色をつけています。フィドルの不協和音や多分上野洋子が歌っているコーラスが非常にいい雰囲気を出しています。ハリウッドでこれをやるとなぜかオーケストラとかでワーグナー以降の近世になるんだよね。指輪物語Enyaが浮いていたみたいに(全部あの線でやればいいのに)。
主題歌は曲やアレンジ、歌詞やアンニュイな歌声を含めて作品世界そのものを歌っています。古楽じゃないけど作品には最適。最終回最後は主題歌で締めるのはこの音楽からするともう既定事項。Cメロが2コーラス目になるのもやっぱり既定事項。2コーラス目にこの先の二人を暗示する歌詞が入ってるんだし。
映像化することで原作の意味が薄れるIPも確かにありますが、これは大成功。原作を知っていたからといって作品の価値が薄れる訳ではないし、これのせいで原作が影響を受けることはない(いや、作者的には「やられた」と思っているかもしれないけど。少なくとも、これのせいで原作の魅力が終わることはない)。
いいもの見させてもらいました。


あ、でも。
「Spicy Wolf」はまだいいとして「Spice And Wolf」は変じゃない? 「Wolf」が固有名詞である「狼」を指しているから大文字はじまりで冠詞が付かないのはともかくとして(できれば「the wolf」の方がなおいいんだけど)、「Spices」じゃないと意味通らなく無い? 単複同型の単語じゃないよな、これ。