BRIGADOONまりんとメラン

面白かった。面白かったんだけど、なんというか残尿感が残るというか……。
というわけでネタバレ注意。もう10年も前のアニメを見直す人がどれだけいるかは謎だけど。
前半の導入は非常に良かったです。酷く燃える主題歌(スーパーロボット方面じゃなくてもきちんと燃える!名曲)とBGMのケルト風味も相まって、おかしなキャラクターにも血肉が通っていました。何事もなかったかのように長屋で大盛りごはんを食べるメランの不思議なヴィジュアルも良かったです。
まりんが長屋育ちで貧乏なのも、それを理由にいじめられるのも、いじめられても明るく振る舞うのもいい感じ。ご近所で怪現象が起きるのを何とかする特撮ドラマとしては面白いです。メランが長屋で何事もなく生活しているのに、世界はそれを許してくれないってのもいいですね。そのどちらにもリアリティがあります。
ただ、途中から意味不明の超展開が鼻についてくるのが気になります。
時代を感じさせ、なおかつ太陽の塔自体がモノマキアとして襲いかかってくるというギミック的な意味合いは判るのですが、万博の下りはあまりに超展開。その上、パビリオンに紛れ込んだらそこにクシャトーンのアンプルがあったなんてのは超展開の極みです。いくらまりん自身に惹かれ合う能力があったからって、何で外国のパビリオンの見えるところに落ちているのやら。
萌ちゃんとの臨海学校の下りも、話としては判るけどエピソード的には無駄。その上、無駄なエピソードにポイクン登場のシーケンスが組み込まれている当たりも無駄さに拍車がかかります。ポイクンというキャラクター自体はいい感じなのに、あちこちで無駄遣いされているのも残念。
無駄遣いという意味ではクシャトーンはもっと可愛そう。あんなに名曲の専用テーマ曲まで用意されているのにウルトラセブンカプセル怪獣以下の扱いです。もっと日常に絡めればいいものを。性格が全然書かれないんだもんなー。もっとクシャトーン自身に感情移入できるような日常が書かれていないと、せっかくブリガドーンに行ったときに足止めとして犠牲になるシーケンスが生きてこない。
メランの心情の変化や、まりんのメランに対して惹かれる流れはとても良く書かれているのですが、そこにこだわるあまり三銃剣士の絆やライバル感が薄れているのも欠点ですね。メランにとってマリン(というか、正確にはマリーン)は生存理由でもあり、おいそれと命を捨てられない瀬戸際の存在なのは判るのですが、理解を求めなさすぎ。
「変数値」という姿のない敵役や、姿がないが故に直接の攻撃対象にならないというアイディアは判るのですが、三銃剣士が家族以上の絆で結ばれているのなら、その絆をもっと書くべきだし、その上でわかり合えないということを印象づけるシーケンスを展開させないとひとつひとつのアクションシーンに説得力が薄れます。パイオンとエリュンも無駄に闘いすぎ。というか、ブリガドーン側の議会やパスカの日実行委員長の差し金なら、きちんと理由を作らないと。だいたい、パスカの日実行委員長はマリーンの生体情報が欲しいのか欲しくないのか書かれないのも変。「変数値」的にはパスカの日を起こして欲しくないのであれば、それが周りにばれてないのも変。ロロは最初から議会が当てにならないことに気づいていたからいいとして(その上、当てにならないと周りにいえない。下手を打つと議会を追放されちゃうし)、ロロ以外が気づかない訳がない。
アンプルの設定もなんかご都合主義でいやだなぁ。クレイスであるまりんとマリーンはアンプルへの出し入れが自由にできるのはいいとして、自主的にアンプルに入ったメランが自主的に出てきたり、そのわりにエリュンは出てこれなかったり(自主的に出てこなかった?なぜ?)当のマリーンが自主的に出てこないのも変。マリーンが自主的に出てこないのなら、その直前の酷い実験や拷問からの逃避とかをしっかり書くべき。
だいたい、まりんがマリーン(モノマキア)の遠いご先祖様だとして、モノマキアの生体としての設定が酷く曖昧。だから、パスカの日の時に「生体情報を持つものがブリガドーンにいないのでパスカの日が起こせない」という事に対する意味づけが凄く薄くなってるのも変。


SF的な設定以外にも、萌ちゃんが「たまたま浮浪者が見つけたアンプルでたまたま巨大化する」超展開とか、いつの間にかエリュンがメランを愛してたりとか(意味ある描写ならそれ以前にも書けー!)、正おじさんの本当の能力と姿とか(すべてが見えすぎるので酒に逃げるのなら、すべてが見える描写が必要)、コスモスが強力すぎて(その上、まったくリスクがない!)主人公がピンチにならないとか、なんか、こう、同じ設定でいいから脚本を書かせろと言いたくなるような作品です。
超燃える主題歌がここぞというところでかかったり、いきなりボーカル付きのBGMで盛り上げたり、とんでもないところで「次回に続く」だったり、30分だれることなく引き込む演出だったり、いろんなところが面白いだけに、このお話のお粗末さ加減が気になって仕方がないです。
おなじ演出で引っ張る系の「ベターマン」は一つ一つの行動に意味があったのになぁ。
なんというか、残念な作品でした。面白かったんだけどね。