せちやん(ISBN:9784062119665)(ISBN:9784062755498)

川端裕人
おもしろかった!
でも、記号としての快楽(最近お気に入りのフレーズ(^^;))は非常に良く判るし、記号に対する思い入れも、あふれ出さんばかりの感情も判るんだけど、えらいいびつな小説です。
なにせ、これが人生だとばかりにあまり脈絡のない出来事が沢山繰り広げられ、それが無理やり一つの出来事に収束させられているのが露骨に見えるのですから。
そういう意味では、かなり武者小路分にあふれた小説でした。


でも、だから悪い小説だとは言えません。何せ、非常におもしろかったです。
無理矢理何人分もの人生の総括をさせられたストーリー的な落ちも、それまでの積み上げもあって十分な説得力を持っていますし、そのあちこちでの光景も非常に美しいイメージです。
ただ、小説としてのまとまりやエピソードの強さは、夏のロケットの方がストレートだったかなぁ、とは何となく思うのでした。
また読みかえすと印象変わるかもしれませんが。