Windows/MacのファイルシステムとSugarのJournal

OLPC XOユーザーインターフェースとして使われているSugarのファイルマネージャJournalは一次元的なファイルシステムです。特にフォルダを持たず、記録された時間をキーにして各種アクティビティー(普通のOSでいうところのアプリケーション)の実行結果をどんどん保管していきます。
ただ、何も考えずにどんどん保管していくとそのうちどのファイルがなんだったのか判らなくなりますので、まずはユーザーレベルでの名前付けの励行と、Journalの強力な検索機能に頼る形になります。Journalはファイル内まで検索してくれるっぽいので、何となく使った単語で引っかけるだけでもかなり役に立ちます。そのうち内部ストレージがあふれる瞬間は来そうですが、それまでにはスクールサーバーにファイルを保管することになるはずです。多分。スクールサーバー見たことないので何ともいえないけど。
出発点がアクティビティですので、ファイルはアクティビティの存在が大前提です。アクティビティはシングルタスクなので(以前は違ったのですが、今はそうなったんですよね?)、切り替えのタイミングがセーブのタイミングになります。


MacのFinderや、WindowsのExploreとそれに基づくユーザーインターフェースファイルシステムは、あらかじめ木構造のフォルダによって情報を分類することを励行しています。フォルダが違えば同じファイル名でファイルの存在は許されますし、フォルダ自体も階層構造を持ち、複雑な分類はあらかじめの分類によって解決するよう考えられています。
とはいえ、WindowsVistaやMacOSXになってファイルの全文検索とそのインデックシングが大きく取り上げられているのはご存じの通り(あら?知らない?Windowsの「検索」フォルダ、こっそり強力ですよ)。Google Desktopなんかも同じ流れですね。
アプリケーションは文書の内容(拡張子など)に関連づけられていますので、アプリケーションの存在はあまり意識されません。


一次元的にはもてないけど、全文検索もしづらいという向きには、「階層構造を持たないフォルダ」に文書を分類するWindowsMobileの方法論も考えられます。もともとWindowsMobileはPCのコンパニオンとして一部データを持ち歩くよう作られていますので、多くのファイルはストレージには持ちません。なので、少ないフォルダに少ないファイルが並んでいる向きにはこれでもさほど困りません。
ただし、ファイルから直接開くことはあまり考えていません。もちろん、開けますが、出発点はあくまでアプリケーション。ついでにセーブのタイミングも意識しません。通常自動セーブです(WindowsMobileは、アプリケーションを明示的に終了しません)。
ちなみに、Ubuntu(GTK?)上のファイルダイアログも「ホーム」以下に1段のフォルダがあるという前提で動いているようです。発想としてはWindowsMobileと同じですね。もちろん、ファイルシステム木構造ですし、ファイル自体はファイルブラウザで自由に移動できますので、出発点がアプリケーションというわけではないのですが。


もともと、大量の文書をうまく裁くことを期待していたWindowsMacは人間側がきちんと管理するようにしないとどうにもならないことを知っていました。もちろんMacエイリアスで、Windowsではショートカットとハードリンク(知ってる人少ないだろうなー)で木構造から外れたサブビューを提供することはできましたが、あくまで補佐的な物です。
検索フォルダも、サブビューを提供するために使われています。「検索結果」は保管せず、「検索条件」を保管しているのが何よりの証拠です。
対して、もともと、木構造ではないWeb上のリソースを検索対象としていたGoogle Desktopなどは、オンデマンドにデータを取得するのが本来の姿だといわんばかりの動きをします。なので、フォルダに分けるとかしなくてもそれっぽい情報を引っ張り出します。
お仕事用のWindowsMacに比べて、教育活動のコマ数が少ないOLPCによる各種教育ツールは、十分な検索さえできればJournalみたいな垂れ流しのファイルシステムでも十分だろう、という発想から出てきているんじゃないかと思います。いざとなれば日付からもカリキュラムは逆算できるし。これを多人数で共有しても、検索さえ強力なら何とかなる……でしょう、きっと。
とはいえ、SugarのJournalを実用アプリとして使おうとかし始めるとはまる日がいつか来るんじゃないかって気がする今日この頃です。
SugarじゃないPC上のMySqueakの中にSqueakletsが何百もあるような状況で、的確なファイルを探し出すのは難しいよなー、やっぱり。Journalの全文検索機能でうまく引っかかるんだろうか?


ちなみに、木構造のフォルダというメタファは強力ですが、意味を理解するまでにかなりの熟練を要する概念ですので、初等教育の段階においてはJournalは非常に有効だと思います。OLPC XOの本来のユーザーは6-10歳の子どもですから。
ここは利便性とかと履き違えてはいけないところですね。
すぐに慣れちゃうだろうとも、思いはしますが。