浸透と拡散

Advanced W-ZERO3が出てから某所でそれまで思いもしなかったようなユーザーからのクレームが表に出てきました。
曰く、

  • 時計アプリと、画面上部のインジケータの時計が秒単位で同期していない。
  • WindowsMobile標準以外の機能(W-ZERO3メール)が標準でバックアップされない

んなもん、当たり前じゃんとは思いますが、私が当たり前と思うのは中の仕組みと都合を知ってるからで、実現するために払うコストの高さとのトレードオフから考えると妥当な選択だとは思います。
でも、当たり前ですが末端の消費者はそんなこと知らないわけです。時計と言えば秒単位であっているのはフツーで、バックアップと言えば全部保管されるのがフツーです。
ここでのフツーは一般名詞の普通とは異なります。個人がそれ以前に経験したことのある何かに照らし合わせた類推を、根拠はなくとも事実であると思いこむことを指しています。そして、ユーザーインターフェースや機能に対するストレスは、フツーにどれくらい遠いかによって変わってきます。
もちろん、ストレス自体が完全に悪いというわけではありません。ストレスを何らかの形で克服したり、ストレスを補ってあまりあるほどのメリットがそこにあればストレス自体を楽しむことができますし、克服したという事に楽しみを見いだすこともできます。ハイテクガジェットのエヴァンゲリスト(伝道者)は、行動の理由の根元にストレスを克服したという体験があると思います。


とはいえ。
使用者が爆発的に増えるとフツーの幅も広がり、ストレスに対する耐性が低い人も増えてきます。ハイテクガジェットにわざわざ手を出そうという人はストレスに対する耐性は非常に高いので、今までクレームの対象とならなかった事でさえクレームとして表に出てくるのは避けられないでしょう。
まして、Windows Mobileは中途半端に普段使っている環境に近く、W-ZERO3はそのWindowsMobileをさらにカスタマイズしています。
省電力化やユーザーからの応答時間を短くするためにタイマーなどの精度を落としていたりタスクスイッチに時間がかかると言うことを知るわけもなく、それまでWindowsMobileを使ったことがない人がW-ZERO3メールが標準のアプリではないということを知っているとは思えません。
かくしてW-ZERO3は致命的な欠陥を抱えたデバイスとしてクレームが立つのでした。


でも。
クレームをたてた人のフツーを責めたところでなにも問題は解決しません。
なにせ、フツーを持ち出す人たちのほとんどは知の共有をするための横のつながりはなく、一つ一つの意見に反論したり、説明しても第二、第三のフツーが現れます。
むしろ、実装上の制限を何とかうまく隠して(解消するのは難しいと思う。解消できないから制限なんだし)、フツーとの差を見せないようにするか、納得させるための新たなパラダイムを提示するなどの方法を採る必要があるでしょう。どちらも非常に難しいですが。
まぁ、どっちにしても、シェアが浸透するに従って、フツーのユーザーが増えてフツーの人にも、おたくの人にも住みづらい世の中ができあがるのです。どんだけー<落ちはありません